喜劇 各駅停車
ナポレオンを尊敬し、同僚からナポ源と呼ばれるベテラン機関士寺山源吉は、五十五歳の退職ま近い男。同僚の助士丸山咲平は貨物列車に乗っているが、目下、いつも桐生駅で会う客車に乗っているかわいこちゃんに夢中。だが、機関車の番組変更で、それも近く会えなくなる。翌日発表になった交番表は源吉と咲平の名が仲よく並んでいた。ベテラン助士咲平に源吉の退職を説得してほしいという菊岡助役の希望があったからだ。その夜源吉の退職後機関士を務めるために転勤してきた大田に誘われ、きみの経営するおでん屋“万両”に来た咲平は、きみから源吉の意外な側面を知らされた。それは戦時中、源吉の助士をしていたきみの亭主が、敵の艦載機に撃たれて死んだ後、子供をかかえてとほうにくれるきみを励まし、息子を東京の大学にやり、きみが商売を出来るのも源吉の援助があったからだというのだ。その夜咲平は胃けいれんを...