色を奏で いのちを紡ぐ 染織家 志村ふくみ・洋子の世界
満86歳にして現役の染織家で、人間国宝でもある志村ふくみ。 自然の中にある草木から抽出した色で絹糸を染め、布を織り上げて着物に仕立てる仕事を究めながら、植物のいのちから生まれる色彩を通して、深い思索に満ちたメッセージを発し続けている。今、「いのちをいただいて色にする」という彼女の哲学は、自然との距離感を喪失した現代人にひとつの指針として受け入れられ、作品である着物と同様眩い光を放つ。そして、ふくみの語る生命観を未来に引き継ごうとしているのが、娘の洋子だ。染色の中でも最も難しいとされる藍染めに惹かれ、母と同じ道に進んだ洋子は、母と共に西洋近代の知の巨人、ゲーテの「色彩論」への理解を深めると同時に、日本人ならではの新たな「色彩環」を生み出そうとしている。 日々紡がれるいのちの色(染色と着物)と二人の言葉(随筆の文面・インタビュー)により、次世代に遺すべき...