森繁よ何処へ行く
土木技師の森繁太郎は若い頃、大変な酒乱だった。ある日、彼は酒場“アーヌ”で他の酔客にからみ、乱闘の末、外科の石田博士の御厄介になるが、そこに現われた新任の女医藤井節子に惹かれて、彼独特の口説きの上、めでたく結婚した。八年後、節子との間に、めぐみという女の子まで生れた繁太郎の家庭生活は幸福そのものだった。だが八度目の結婚記念日に、かつて節子の誕生日を石田博士と三人で祝った思い出のレストランで過そうと出かけた繁太郎は、自動車事故の突発で妻を失い、悲嘆のどん底に突き落された。妻亡きあと、繁太郎は一人娘めぐみの生い立ちにのみ生き甲斐を感じていた。ある日、めぐみの買った薬品の懸賞に当選して、伊豆半島一周旅行に出掛けた繁太郎親子は、バスの車中で喫茶店のマダム圭子と知合いになった。甘えかかるめぐみに向って旅行中はママになってあげようと約束した圭子は、帰途、修禅寺の...