三つの真珠
焼け残ったもとの屋敷に疎開先から帰って来た達夫兄妹と祖母、母はあの戦争*ぎの中で安く手放してしまった隣りの邸に美しい三人姉妹が豪華な暮しをしているのをみてうらやみ、頭の古い祖母は得体の知れぬ女たちだと交際を禁ずる。達夫は勤務する病院で和製ペニシリンの研究に没頭していたがある夜三人姉妹の長女宗子の急病の診察を依頼され、手おくれになった盲腸炎から彼女を救うべく祖母の激しい反対を押し切って懸命の手を尽し研究完成間近のペニシリンを使って遂に成功する。それが機縁で達夫と宗子はいつか互に引かれる仲になっていった。息子娘たちの新時代的な言動と常に衝突し心を痛めた祖母が脳いっ血に倒れた時馨子は達夫を説いて高木家に看護婦として入り込む上海で特級看護婦の免許をとった技術と親身な看護にすっかり快くなった祖母は彼女の人柄にほれ込み、息子の嫁にと思うのだった。達夫のペニシリン...