忍術罷り通る
大阪夏の陣で戦死、今は天国にいる三好清海入道は、裟婆に残した一子金太郎を恋うのあまり、月光大師に十日間休暇の許しをえて親友猿飛佐助ともども下界に降りる。下界は一九五三年の銀座。行人を驚かしつつ血眼で金太郎をさがす道すがら、酔漢松本の誘いにのって飲み屋に入りこんだ。盃をあげて歓談のあげく松本の鞄をとりちがえて立ちいでたが、中身の札束三万円、もとより大事の物としらぬ二人は悉く風にちらしてしまった。彼らを探しだした渡辺は呆然自失、悲歎のどん底に沈むありさまに、さすがに気づいた二人は、チョンマゲを斬り、洋装に身を固めて弁償金かせぎに大活躍をはじめる。拳闘の懸賞試合でノック・アウトを食らったが、競馬場では猿飛の忍術効を奏して大アナをあてる。弁償は首尾よくなしおえたが、一切金、金の浮世にイヤ気がさし、また四百年後の日本に金太郎を見出すすべもなし、と三好は天国に去...