群衆の中の殺人
◇前篇--競馬場で労働者風の若い男が射殺された。解剖の結果、被害者が麻薬の常習者であることが分った斎藤刑事は、ドライブ・クラブに勤めている被害者の妹規子に遺留品を届けに出掛けた。そして、兄にもクラブから給料が出ていたことを聞くと、クラブの出資者であるキャバレー「横浜」のマスター鍋島に会った。が、何も聞き出すことはできない。二人が話し合っている時、吉井という若い男が、ボーイ見習として入って来た--。新車にピクニック・ケースを乗せてドライブに出かけた新会員の外国人ハンクが、車を返しに来て帰る時、ケースを持っていなかったことに規子は気づいた。そして、支配人の江川がすぐその車に乗って出ていったことに不審を抱いた。「横浜」に乗りつけた江川は、ハンクが持っていたケースを取り出すと、鍋島の事務所に消えた。ホールに姿を見せた彼は、吉井に眼をとめると昔話に花を咲かせた...