鯉名の銀平又名Koina no Ginpei
伊豆の下田から志州鳥羽行の舟に乗りおくれた鯉名の銀平と爪木の卯之吉は、五兵衛の娘お市の美しさに心を奪われた。五兵衛は今こそ堅気だが、かつて恩を受けた親分大鍋の島太郎が落目になり、帆立一家が彼の縄張りを奪うため不法な殴込みをかけようとしているのを知り、助っ人に飛び出そうとしている所だった。そこへ帆立一家から掛合いに来た三人と争い、五兵衛は散々に痛められた。見かねた銀平は、忽ち三人をたたき伏せた。お市の美しさに、卯之吉は化病を使って出発を伸ばす。然しお市は口にこそ出さね、銀平を心底から慕っていた。癪にさわった卯之吉は五兵衛と一緒に大鍋の賭場に乗込んだが、元も子も無くした挙句、喧嘩の助っ人になる条件で十両の借金をした。而も銀平も一緒にという約束であった。港町に祭提灯が輝く夜、帆立一家の殴りこみが来た。お市の手を振切って銀平が駈けつけると、卯之吉の姿は見えず...