黎明八月十五日 終戦秘話
昭和二十年七月、その頃の日本は、限りない戦争の災禍と横暴な軍閥の重圧の下に疲れきっていた。その中にあって抗しきれない波涛に身をもまれながら、尚一片の正義を求めんとして苦しむ青年記者の佐伯、いつか暗黒の命令に自分の思想を見失って行く作家吉田、冷酷な憲兵のため傷つけられた娘君子などの姿があった。山田二等兵は、軍隊を逃れ、その妻良子は非国民の妻の刻印をおされ、あくことを知らない憲兵隊の眼に追いつめられていた。山田はようやく家へたどりついたが、子供の年子は病気の床に横たわっていた。追いすがる子供をふり切ることの出来ない山田を憲兵は荒々しく引き立て、争いの果てに妻の目前で銃殺してしまうのだった。広島に原子爆弾が投下され、次に来るものは本土決戦といいふくめられ、人々はやせた手に竹槍をにぎりしめるのだった。しかし、やがて八月十五日がやって来て、日本敗戦の事実は人々...