-×-又名マイナス・カケル・マイナス
大阪郊外の町。日に日に緊張感が高まる異国の戦争のニュースがラジオから流れている。古い小さなアパートに独りで住むタクシードライバーの貴治。夜勤明けは大抵、消費者金融からの電話や新興宗教の勧誘、隣室からの喘ぎ声を適当にやり過ごし、部屋で一日無為な時間を送っている。ある日いつも通り市内をタクシーで流していると、妙な色気と無邪気さを持ち合わせた不思議な客・京子を乗せる。この出会いは、貴治の眠っていた黒い**をかき立てることに…。一方、両親の離婚で父と暮らすため、新生活を迎えた凛はずっと心に引っ掛かる“ある思い”を両親や親友にも打ち明ける事ができずにいた。そんな気持ちを抱えながらの母との再会で、凛の悲しみは静かに、そして激しく流れ出す。彼らは今まさに、始まろうとしている異国の戦争を思い描くことはおろか、目の前のささやかな日常さえどうにもできずにいた…。