大東京誕生 大江戸の鐘
◇風雲篇--幕末の頃。黒船の渡来以後、日本の鎖国の夢は破られた。薩長の尊皇攘夷の運動は高まり、歴史は**に動いて行った。小栗上野介は幕府の中心人物として立ち、大政奉還という徳川慶喜の方針には賛成したが、徳川を朝敵にしようとする薩長の策謀には憤っていた。そのためには薩長とも一戦辞すべからずと主張していた。その養子・又一はかねて上野介から世界の新知識を学んでいた。彼には父の思惑が判らなかった。日頃に似合わぬ反動的意見と、父に対立し、海軍の先輩・勝海舟の和平論に同調した。が、海軍には榎本武揚らの強硬な抗戦論が主流を占め、彼は不肖の子・臆病者と指さされる。許婚のさい子の父も卑怯者には娘をやれぬと息まくのだ。が、さい子は又一を信じ、彼を励ました。海舟は幕臣の非難を浴び、すでに死を覚悟していた。論敵小栗上野介から舟宿に招かれたとき、彼は又一をよろしく頼むという意...