北アルプス山岳救助隊・紫門一鬼 北アルプス穂高連峰殺人事件
北アルプス山岳救助隊涸沢分室に、オリエンテーリングに参加した二人が帰還しないという連絡が入った。上高地田代池から西穂までのコースを、制限時刻午後四時三十分までにゴールするはずだったのだが、三時間半を経過しても二人は戻ってこないという。 上高地アルペンホテルに設けられた遭難対策室で、紫門一鬼や片桐三也子ら山岳救助隊のメンバーは、未帰還の二人、木戸章と奥村弓絵が婚約中であったことを知る。二人は最終チェック・ポイントの焼岳小屋に二時四十分に到着していることから、下山ルートを辿れば、余裕をもって制限時刻内に田代池に戻れるはずであった。しかも、木戸は山岳経験が豊富で、道に迷ったとは考えられない。 翌朝、捜索に向かった紫門たちは、木戸と弓絵の二人が樹林帯のけもの道に入り込んだことを知る。そして視界の開けた沢場で、二人の遺体を発見した。 オリエンテーリングのコース...