白蘭紅蘭
若い建築技師の井筒英志に、竹村千草という翡翠の指輪を持つ女性と結婚せよとの条件で、突然巨額の遺産が転がり込んできた。もしこの条件を果たさない時は、それは千草に与えられるというのである。銀座のキャバレー「黒水仙」に竹村千草という歌手がいたが、英志は彼女(紅蘭)の妖しい美しさ、鉄火な気性に圧倒され、話もせずに早々と引き揚げてしまった。その頃、遺書が指定する竹村千草(白蘭)は両親を失って、元の使用人狹山夫婦の家に寄寓していた。彼女には岩本謙太郎という恋人がいたが、狹山夫婦に仲をさかれ、岩本は白蘭を誤解したまま研究のためアメリカへ発ってしまった。しかも白蘭は、紅蘭を抱き込んで遺産をせしめようと企む紅蘭のマネージャー望月に問題の指輪を奪われ、今ではとある喫茶店に勤める身であった。英志は彼女が白蘭とはつゆ知らず、店のなじみ客として彼女と親しくなっていったが、一方...