黒いダイスが俺を呼ぶ
賭博がもとで兄と恋人を失った氷室浩次は、二度とダイスを振るまいと決心すると新興工業地宇山市へ現われた。この街ではいかさまバクチで善良な市民から金品をまきあげる依田組の卑劣さが、目にあまるものがあった。氷室は城崎医院の二階に下宿するとバー“クラウン”のバーテンに落着いた。城崎の好意と、明るい看護婦茂子に囲まれた毎日は、氷室にとって楽しかった。ある夜、三年前に家出した城崎の伜周一が帰って来た、医業を捨てヤクザになりはてた周一の姿は城崎には頭痛のたねであった。東京の榊原組に入った周一は、組長から餞別をもらって郷里へ帰って来たのだ。氷室が下宿していることに怒った周一は、恋人のホステス牧子のとめるのも聞かず、すさんだ毎日を送っていた。城崎の苦しみをみかねた氷室は、依田組に加わってダイスを振る周一に激しい怒りを覚えた。数日後、東京の榊原組の子分が依田組へやって来...
没想好 2021-10-16
大森盛太郎 小林旭の『賭博師』シリーズ第2弾